2015年 大塚萬劇場
主催/THE☆JACABAL’S〈ザ☆ジャカバルズ〉
脚本/阿部 ぽてと
~~~第4回~~~
【第二場】
季節は夏。セミの鳴き声。
奉行所の一室。
小早川伝、平林群治、長尾永真がいる。
与力の小早川の下、会議を行っている。
長尾 繁盛店の店主が次々と殺される……今月に入って三件、年が明けてからは二十件を越えております。店主を失った店は、どこも畳んでおりますが……店主が襲われた際、金を奪われたことは一件もありません。
小早川 ……金目当てではないか。
平林 同一人物の手によるものでしょうか?
小早川 それすらも分からん。これだけの数を起こし捕まらんとなれば、手口を模倣する者も出て来るはず。
平林 なるほど、そこに気づくとは流石です小早川様!
長尾 ですが、その手口が全く分かりませぬ。模倣するにも、手口が分からなければ……手口どころか手がかりすら無い状況ですから。
小早川 ならば手がかりを見つけて来い! むざむざ死体の数だけ増やしおって……上の方達もお怒りだ、このままでは儂の評価が……
平林 評価でございますか?
小早川 民からの評価が下がったら色々困るだろ。今の江戸は悪人だらけ、儂等が手を焼いている間に、江戸の用心棒などという者が現れたそうではないか。
長尾 はっ。素性の分からぬ流れ者ですが、剣の腕は相当なモノ。町の悪党を片っ端から締め上げているようで、民の間で大層人気を集めております。
小早川 そんな訳の分からぬ奴に好き勝手させてよいのか? 江戸を守り、民の信頼を得るのは我等の役目……店主殺しは何としても我等の手で上げねば……
徳丸・佐川がやって来る。
佐川 遅れ申した。
小早川 ? 吉兆と松本はどうした?
佐川 見回りでは?
平林 前もって会議があるとお達しがあったはずですが?
佐川 儂に言われてもな。
小早川 見回りと言い、どこかで油を売っているのではないだろうな。
徳丸 ……。
平林 徳丸殿、あまりあの方達と付き合わぬ方がよいぞ。
徳丸 え?
平林 最近随分と親しげではないか。
徳丸 ……そんなことは。
平林 我等まだ同心になって日も浅い。学ぶべき相手は見極めねば……我等には与力である小早川様がおるのだ、素晴らしき手本となるお方が目の前におるのだぞ。
徳丸 ……。
平林 これは!? ご本人を前にして、つい。
小早川 構わぬ。其方らは日が浅くとも江戸を守る同心、良き師から学ぼうというのは実に良き心がけ、励めよ。
平林 はっ! あり難きお言葉。
徳丸 ……。
小早川 兎に角、店主殺しの情報を集め他の悪事も防げ。これ以上、江戸の用心棒なる者に好き勝手やらせる訳にはいかぬ、我等の威厳が失われるからな。心して掛れ。
一同 はっ!
小早川、去る。
第5回へつづく
次回公演
「真田黙示録」
2020年 8月19日(水)~23日(日)
シアターχ(東京・両国)
作 /江戸川崇(カラスカ)
演出/重住燎
主催/THE☆JACABAL’S〈ザ☆ジャカバルズ〉
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