第37回_大江戸バッドガイズ千里行

2015年 大塚萬劇場
主催/THE☆JACABAL’S〈ザ☆ジャカバルズ〉
脚本/阿部 ぽてと

~~~第37回~~~

【第二十六場】

   どこかの丘。

   町から少し離れた場所。

   乗松が逃げて来る。

   乗松の前に現れる山吉。

乗松   !? ……山吉親分。

山吉   無事に逃げて来れたみてぇだな。

乗松   ……ありがとうございます、同心が来るってこと教えてもらって。

山吉   いいってことよ、可愛い子分を見殺しに出来ねぇだろ。

乗松   乗松屋潰しちまったアッシには勿体ねぇお言葉。

山吉   十分稼いだだろ、ここらが潮時だ。

乗松   小早川は上手く丸めこんだと思ったんですがね。

山吉   それよりも一匹やっかいな同心がいたからな。

乗松   この後はどうするんですか?

山吉   俺もその同心に目付けられちまったみてぇだ、この江戸を離れる。ここじゃあもう悪さ出来そうにねぇからな。

乗松   それじゃあ、アッシも一緒に。また、どっかで店構えて回りの店主殺せば金はいくらでも稼げますぜ。

山吉   いや、良い方法だと思ったんだがな……真面目に働いてるフリして悪事を働く、やっぱ俺の性には合わねぇや。

乗松   え、それじゃあ止めるんですかい? アッシ等、悪党が正々堂々稼ぐのには持って来いだと思ったんですがね。

山吉   そうなんだけどな、オメェみてぇなマヌケにやらせてダメってこと分かったからよ。

乗松   え?

   村雨が走り込んで来て乗松を斬る。

乗松   !?

村雨   ……。

乗松   ……用心棒、どうして?

山吉   一度お上にバレちまったやり方、また出来ねぇだろうが。馬鹿な子分は使えねぇな。

村雨   全くだ、せっかく落ち着いて暮らせるともったのによ。

山吉   俺が紹介した用心棒って職がそんなに気に入ったか?

乗松   え? ……アンタは辰五郎を使ってアッシが雇った。

村雨   テメェ等の小芝居がなくてもな、山吉親分は初めっから俺をお前の用心棒にするって決めてたんだよ。   

乗松   あんた等、裏で繋がってたのか? 親分、アッシはアンタに従って……

山吉   おう、オメェはよく俺に騙されてくれたよ……ありがとな。

   村雨、乗松を斬る。

   乗松絶命、ハケる。

山吉   んじゃあ行くか。

村雨   音流は置いていくのか。

山吉   あいつは喋れねぇから、残して行っても問題ねぇだろ。

村雨   なぁ親分よ、俺の事も騙してるってことはねぇよな。

山吉   どうだろうな、騙されてる方が幸せってのもあるんじゃねぇか?

村雨   俺はあんたの悪い様にはしねぇからよ、寝首をかくなんてことはよしてくれよ。

山吉   それはお互い様だろ、源三。

佐川(声)悪人同士が仲良さそうだな。

山吉・村雨  ……。

   佐川、出て来る。

佐川   見栄えの悪い光景だぞ。

山吉   佐川。

村雨   あの同心は撒いたはずだが。

   あやめ、出て来る。

あやめ  ……。

佐川   こいつに山吉の動きはずっと探らせていたからな。

山吉   へぇ、こいつは吉兆じゃなくてアンタの子飼いだったってわけか。

佐川   俺の目的は初めからお前だよ山吉。同心に従ってるふりして、吉兆から得た情報を悪人どもに流してたろ。この江戸で悪党共が良く育つ訳だ。

山吉   ……気づいてたのか……厄介な野郎だな。

佐川   素直すぎるのも考えものだぞ、騙すならもっと上手く騙してくれねぇとな。

山吉   今後の参考にさせてもらうよ。

佐川   今後があると思うか?

山吉   ああ、ここで死ぬのはお前の方だからな。

   村雨、佐川に襲い掛る。

第38回へつづく

次回公演

真田黙示録

2020年 8月19日(水)~23日(日)
シアターχ(東京・両国)
作 /江戸川崇(カラスカ)
演出/重住燎
主催/THE☆JACABAL’S〈ザ☆ジャカバルズ〉
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