2015年 大塚萬劇場
主催/THE☆JACABAL’S〈ザ☆ジャカバルズ〉
脚本/阿部 ぽてと
~~~第29回~~~
【第十九場】
乗松屋、店内。
小早川、平林、乗松、真澄、辰五郎がいる。
小早川 使用人は積荷の下敷きになって亡くなったと?
乗松 ……へい。
辰五郎 朝来た時にはもう。
真澄 小芝さん、良い方だったのにこんなことになるなんて。
小早川 確かお前も積荷で腕を切ったと言っていたな?
辰五郎 はい、私はもうこの通り治りましたが。
小早川 此度の亡骸にも刀傷があったと言うが……のう、平林?
平林 はっ、その様に報告を受けております。
小早川 積荷で刀傷が出来るとは、一体どんな積荷なのだ?
乗松 ……。
小早川 乗松屋、お主何か良からぬことをしておるのでは?
乗松 何を申されるのですか、その様な事は。
平林 お主等の証言と、遺体を見た結果が全く合わぬ。
小早川 儂はどちらを信じれば良いのだ?
乗松 ……。
小早川 お主を信じたいのだがな……
乗松 小早川様……どうかこれで穏便に……
と、大金を積む。
平林 こんなに!?
小早川 乗松屋……儂が金を貰う為だけに、お主の下に来ていたと思うか?
と、一枚の紙を見せる。
乗松 これは!?
小早川 お主の店に並んだ商品が気になったのでな、仕入れ先など調べさせてもらった。
見る者が見れば……妙なことに気づかぬか?
乗松 ……。
小早川 これが表に出ればどうなる?
乗松 ……。
小早川 今は儂しか気づいておらぬ、お主次第でいかようにもなるのだがな。
乗松 ……辰五郎。
辰五郎、一旦奥に入り更に大金を持って来る。
乗松 どうかこれで。
小早川 ……儂とお主の付き合い、今回の件は事故死としておこう。
乗松 ありがとうございます。
小早川 平林。
と、金を受け取らせる。
小早川 儂がおるからとて、あまり危ない橋を渡るなよ。
と、平林と去って行く。
乗松 これでは、どちらが悪人か分からぬな。
辰五郎 金を払わずともあの様な者、私が如何様にも。
乗松 同心に手を出すのは不味い。渡した金も稼いだ分に比べれば僅かな物。持ちつ持たれつ商いを出来るなら、それで良しとしよう。
真澄 でも、またあの紙チラつかせて金を好き放題引っ張りにりに来るのでは?
乗松 だろうな……辰五郎。
辰五郎 はい。
乗松 あの帳簿は燃やしておけ。
辰五郎 よろしいので?
乗松 あれが見つかれば、更に要求が大きくなる。
辰五郎 かしこまりました。
と、去る。
乗松 真澄、お前も他に余計な物があれば処理しておきなさい。
真澄 はーい。
と、去る。
乗松 小早川め、全ての同心を押さえてくれれば良いがの……
と、去る。
第30回へつづく
次回公演
「真田黙示録」
2020年 8月19日(水)~23日(日)
シアターχ(東京・両国)
作 /江戸川崇(カラスカ)
演出/重住燎
主催/THE☆JACABAL’S〈ザ☆ジャカバルズ〉
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