2015年 大塚萬劇場
主催/THE☆JACABAL’S〈ザ☆ジャカバルズ〉
脚本/阿部 ぽてと
~~~第12回~~~
吉兆 出来るな?
佐川 ……始末する必要はない。
吉兆 何?
佐川 長尾が取り調べておったが、頑なに何も話しておらぬ。やったことも美人局、牢に入れられても数日で出されるだろう。
いちか 本当かい?
佐川 牢が罪人で溢れておるからな。始末などすれば、かえって面倒になるぞ。
吉兆 ……。
いちか、安堵してヘタリ込む。
松本 良かったな、いちか殿。
いちか ああ、本当に……良かったよ……
吉兆 何が良かっただ。儂に背き勝手を働いたことの罰はしっかり受けてもらうぞ。
いちか ……。
吉兆 二郎が戻ったら、お前達姉弟はしばらくタダで働きだ。
いちか タダ!? こいつが入って取り分減って苦しいんだ、そりゃないだろ?
吉兆 罰なのだから苦しくて当然だろ。
いちか ……。
吉兆 いちかと二郎が揃うまでは、お前等二人にしっかり稼いでもらう。連帯責任だ。
あやめ・芝助 ……。
佐川 それなんだがな吉兆……しばらく悪事を控えた方が良い。
吉兆 ?
佐川 二郎を捕まえた奴が気がかりだ。そいつが何者か分かるまでは。
吉兆 どっかの流れ者が用心棒などと言われ調子に乗っているだけだ。気に掛けることなどない。
佐川 小早川も監視の目を光らせている、ヘタに動くべきではない。
吉兆 それでは金はどう稼ぐ?
佐川 バレたら、金どころではないだろ。
徳丸 金が欲しければ真面目に働けば良いのでは?
吉兆 何?
徳丸 表向きあなたは一応同心なのですから、江戸の平和の為に働いてみては?
吉兆 なんだと貴様。
松本 儂も動くべきではないと思う。二郎が捕まっておるのだ、儂等の弱みを握られているのと同じ……ここで誰かが捕まれば二郎の身に危険が及ぶかもしれぬ……
いちか 松本の旦那。
松本、いちかに優しい笑顔を向ける。
松本 お主等(あやめ・芝助)も、そう思うよな?
芝助 俺達の意見なんてこの人聞いてくれるのかよ?
吉兆 ……。
山吉 どうしやすか、吉兆の旦那? ほとぼりが冷めるまではアッシも動かねぇ方が良いと思いますが……
佐川 これ以上、捕まる者を出す訳にはいかぬだろ。
吉兆 ……気に喰わぬな。
松本 吉兆。
吉兆 ……しばらくは召集も控える。その代わり、時が来れば貴様等に存分に悪事を働いてもらうぞ。よいな。
あやめ・芝助 ……。
松本 ありがとう、吉兆。
吉兆 ……。
暗転
第13回へつづく
次回公演
「真田黙示録」
2020年 8月19日(水)~23日(日)
シアターχ(東京・両国)
作 /江戸川崇(カラスカ)
演出/重住燎
主催/THE☆JACABAL’S〈ザ☆ジャカバルズ〉
詳細はこちら>>>