2015年 大塚萬劇場
主催/THE☆JACABAL’S〈ザ☆ジャカバルズ〉
脚本/阿部 ぽてと
~~~第30回~~~
【第二十場】
道。
あやめ出て来る。
小早川たちを張っていたという体。
あやめ ……。
小早川たちが来るのに気付き隠れる。
乗松屋から帰る道中の小早川・平林。
平林は乗松屋を脅した紙を読んでいる。
平林 この紙一枚で大金の上に更に上乗せさせるとは、感服致しました。
小早川 馬鹿者、こんな所で読むな。
平林 申し訳ございませぬ。
と、懐にしまう。
小早川 その紙に書いてある仕入先、もう一度調べ直せ。そこからも金を取れるかもしれぬ。
平林 はっ。……ですが、乗松屋の悪行よく気づきましたね。
小早川 金のある所は対外ロクなことをしておらぬからな、伊達に与力まで上り詰めておらぬ。
平林 流石小早川様。この後は内与力、お奉行と上り詰めるのですね?
小早川 その為にはまだまだ金が必要だ。
平林 出世に金が必要なのですか?
小早川 出世も何も金次第、上の連中などロクな者がおらぬぞ。お主も出世したければ金は貯めておけ。
平林 は。
小早川 儂の出世への道は順調に進んでおる。用心棒が現れた時はどうなるかと思ったがな。
平林 何故です?
小早川 あんな奴がおっては、儂等の価値が下がるだろ。するとどうなる、儂に金を払う者がいなくなるであろう。
平林 なるほど。
小早川 用心棒を雇おうが、このネタがあれば乗松屋は儂に金を払う。これだけの金を簡単に払うのだ、まだまだ搾り取れる。全て儂の思うがままだ。
平林 ……あまりやり過ぎれば、上に気づかれるのでは?
小早川 その為の手回しもしておる、バレることはない。お主がヘタな気を起こさぬ限りの。
平林 私は小早川様を尊敬している故、その様なことは……
小早川 分かっておるは、行くぞ。
と、去ろうとする。
あやめが駆け足で出て来て、平林とぶつかる。
この時、平林の懐から乗松屋の悪行を書き留めた紙を盗む。
平林 ぐおっ!?
あやめ 申し訳ございませぬ。
平林 ふじえさん!?
小早川 うん? おお、乗松屋の娘。
平林 素敵だ。
小早川 ……。
あやめ すみません、急いでまして。
平林 どうかされたのですか?
あやめ ……小芝さんがあんなことになってしまって。
小早川 ……お前はグルではないのか?
あやめ え?
平林 小早川様、ふじえさんはあの者達と違います。
小早川 ……。
あやめ なんのことでしょう?
平林 いえ、お気になさらず。
小早川 行くぞ平林。
平林 え、せっかくふじえさんと会えたのに。
小早川 儂が行くと言うておるのだ、下らぬ色恋沙汰はロクなことにならんぞ。
平林 はぁ……では、また。
小早川・平林ハケる。
あやめ ……。
あやめ、紙をスッたことを見せた後、去る。
第31回へつづく
次回公演
「真田黙示録」
2020年 8月19日(水)~23日(日)
シアターχ(東京・両国)
作 /江戸川崇(カラスカ)
演出/重住燎
主催/THE☆JACABAL’S〈ザ☆ジャカバルズ〉
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