2015年 大塚萬劇場
主催/THE☆JACABAL’S〈ザ☆ジャカバルズ〉
脚本/阿部 ぽてと
~~~第3回~~~
あやめ 旦那! 殺しは……同心の死体が上がったら旦那たちでも、誤魔化しきれないだろ?
吉兆 問題無い。
あやめ !?
吉兆 金を盗んだのをこいつにすればいい。
一同 ?
吉兆 こいつは佐々木屋から金を盗み、儂等の説得に応じず斬りかかってきた。そして返り討ちに合い命を落とした……そういうことにすればよい。
徳丸 そんな嘘、誰が信じる!
吉兆 馬面一味を相手に大捕物している時、お前だけこやつ等を追って消えたからな……そのことは他の同心や捕り方達も知っている。
徳丸 ……。
吉兆 その事実があれば真実は簡単に書き替えられる、いかようにもな。どうする、徳丸?
徳丸、吉兆に向かおうとするも佐川に刀を付けられる。
徳丸 !? ……殺せ、悪に成り下がる位なら死んだ方がマシだ。
吉兆 ……そうか。
佐川、徳丸の首を切ろうと刀を上げていく。
あやめ ちょ、やめてよ、殺しはしないって……殺しちまったらアタシ等……旦那!
あやめの制止を無視し、構える佐川。
徳丸も覚悟を決める。
佐川が刀を振り下ろそうとした瞬間。
吉兆 だが、本当にいいのか? お前が悪事を働き命を落としたとなれば残された家族はどうなる?
徳丸 !?
吉兆 お前は良い家の出だったな? 家の名は地に落ち、お前の家族は世間から苛まれることになる……一番下の妹、まだ十にも満たぬそうではないか? 妹のこれからを思うと不憫でならんの。
徳丸 ……貴様!
と、吉兆に襲い掛るが佐川に鳩尾を殴られる。
徳丸 ウグッ!?
いちか 殺しちまいなよ。筋書出来てるなら、それでいいだろ。
芝助 仲間にしたって、あんた等の上にいつチクるか分からねぇぞ。
吉兆 その心配はない。こいつが上に何を言おうと、若造一人と、儂等三人、どちらが真実と聞き入れられる? なんならお前達を証人に立てることだって出来る。
二郎 ……そこまで無理して仲間にする必要あるんすかね?
吉兆 幕府から奉行所に警戒を強めるようお達しがあった、この後は何かと動きづらくなる。仲間に同心が多いに越したことはない。悪事が出来ず金が入らないのは御免だからな、お前達もそうだろ?
いちか・芝助・二郎 ……。
吉兆 見逃せと言うのは聞かぬぞ。お前に残された道は二つに一つ、悪に下って生き延びるか……正義を貫きここで死ぬか。
徳丸 ……。
吉兆 大切な家族を不幸にしたくないのだろ?
徳丸 ……分かった……仲間に……してくれ。
吉兆 良い返事が聞けて何よりだ。
徳丸 ……。
芝助 納得いかねぇよ。コイツが入ったら、その分、俺達の分け前減るんだろ?
いちか それを勝手に決められちゃあね。そもそも、こうなったのも旦那たちのせいじ
ゃないか?
二郎 仲間にするのも旦那たちの失敗隠す為じゃ?
いちか こりゃ取り分の見直しが必要だね。
吉兆 黙れ。
いちか・芝助・二郎 !?
吉兆 勘違いするなよ。儂は同心、お前等に縄を掛けるなどいつでも出来る。黙って儂の言うことに従っていろ。
いちか・芝助・二郎 ……。
あやめ ……。
吉兆 お前も以後、儂に従え。よいな。
徳丸、屈辱の表情で頷く。
吉兆 そんな顔をするな。お前にも分け前は渡す。金を手にすれば仲間になって良かったと、お前の気持ちも変わるさ。
徳丸 ……クソ!!!
ブリッジ音楽。
暗転。
第4回へつづく
次回公演
「真田黙示録」
2020年 8月19日(水)~23日(日)
シアターχ(東京・両国)
作 /江戸川崇(カラスカ)
演出/重住燎
主催/THE☆JACABAL’S〈ザ☆ジャカバルズ〉
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